公共政策大学院 2010年度ミクロ事例研究(エネルギー・環境・規制)

担当者

戒能一成・松村敏弘 

お知らせ

・事例研究に参加希望で冬学期の第1回の講義に欠席した者は松村までメールで連絡下さい。
・夏学期の講義は全て終了しました。半年間熱心に参加してくれて、 かつ立派なレポート仕上げてくれてありがとう。 今後もし不明な点など出てきたら、いつでも質問にいらしてください。

科目概要

   1年生班は、ミクロ、マクロ、計量を学ぶ前に、具体的な事例に取り組み、 今後学ぶこれらの分析道具を使いこなすためのイメージを作ることが目的です。 最終的に提出するレポートは、既に学んだ道具を使いこなした成果ではなく、 これから学ぶ際の出発点という性格を持っています。 したがって、レポートの完成度は必ずしも高くなくとも、使った道具が若干不適切であったとしても、 後になって「こうすればより良いものになった。そのことがミクロ・マクロ・計量を学んで認識できた。」 と実感できれば、コース全体として成功であるといえます。 公開したレポートを読まれる方はそのような性格のレポートであることをご承知おき下さい。

前期レポート

今田園香(法政策コース1年)
報告書タイトル: 京都市の「家庭ごみ有料指定袋制」導入の影響評価
要旨
京都市の家庭ごみ排出量の時系列的変化において、「家庭ごみ有料指定袋制」の導入が影響を及ぼしたかどうかを検証する。
 「家庭ごみ有料指定袋制」とは、「ごみへの関心を高め、 ごみ減量、分別・リサイクルを一層促進するきっかけとするため」として、2006年(平成18年)10月に京都市が導入した制度である。
 モデル分析によると、「家庭ごみ有料指定袋制」によって、 制度導入初年度とした2007年度 の京都市の1人当たり家庭ごみ排出量は約16.2キログラム(2007年度排出量の約10.4パーセント)減ったと言える。 サンプルが少ないにせよ、過去の変動からすれば、最低でも年間約10.7キログラム(2007年度排出量の約6.9パーセント)、 最大で約21.6キログラム(2007年度排出量の約13.9パーセント)の家庭ごみの減少にこの制度が寄与していると考えられる。
報告書.doc

高木駿平(経済政策コース1年)・好井俊春(経済政策コース1年)
報告書タイトル:米政策の転換による影響の分析
要旨
我が国の米政策は、食糧管理法(以下食管法)から「主要食料の需給及び価格の安定に関する法律」(以下食糧法)への転換、 及びその後の食糧法の改正によって、大きく転換した。食管法の下では全ての米は食糧庁を通じて消費者の元へ届けられていたが、 1995年の食糧法に施行に伴い、①政府の米流通管理は流通量の一部に限定され、政府が基本的に関与しない計画外流通米が法的に認められる、 ②計画流通米の主流は自主流通米とされ、政府米は備蓄用に限定される、 ③米の生産調整については引き続き政府が主体となって行い、生産調整に参加した生産者から米を備蓄用の範囲内で買い上げる、 という方針に転換した。また、その後、2004年に改正食糧法へと移行し、 ①計画流通米と計画外流通米の区別をなくす、②流通を更に多様化する、というように転換された。
本稿では、これらの米政策の転換が、米の小売価格にいかなる影響を与えたかについて、モデルを定式化し、時系列分析を行うことによって明らかにしていく。 食管法から食糧法への改正では、政府の買取を止め、流通を自由化したことによって小売価格を下げるという影響を与えたことが認められる。 しかし、食糧法から改正食糧法への移行は、①すでに需給を反映した価格付けが行われている、 ②流通規制の緩和は十分に進んでいる、という実態を追認したに過ぎず、政策の転換による米の小売価格への影響は有意に認められない。
報告書.doc

森脇悠貴(経済政策コース1年)
報告書タイトル: 航空運賃規制緩和の影響評価 -路線別価格差の視点から-
要旨
昭和27年に航空法が制定され、運賃規制・参入規制がなされていた国内航空事業であったが、 平成8年頃から徐々に規制緩和が始まった。 規制緩和の目的は消費者の利益拡大であったが、 その利益を享受しているのは規制緩和によって価格競争がおきた路線の消費者だけであると考えられる。 そのことを確認し、規制緩和によって消費者の利益はどれだけ確保できたのかを測定することによって 規制緩和の影響を評価するのが本研究の目的である。
まず、規制緩和による価格低下が路線別に格差があることを確認するために、規制緩和後のANA、JALの両既存企業の 羽田発着の路線で特割1の運賃を羽田からの距離、搭乗率、便数、3つの競争ダミー (既存企業同士の競争、新幹線との競争、新規参入企業との競争)によって回帰をおこなった。 結果、ANAでは新幹線との競争があれば約4500円、新規参入企業との競争があれば約2700円、 JALでは新幹線との競争があれば約5700円、新規参入企業との競争があれば約3700円分、 運賃が安くなることが分かった。よって競争の有無による路線別の価格差が生じていることが分かった。 また、既存企業同士の競争では価格競争は起きておらず、カルテルの存在の可能性も明らかになった。
次に、規制緩和の影響による消費者余剰と生産者余剰を推計した。 規制緩和により増加した消費者余剰のほうが生産者余剰より大きく規制緩和は社会的余剰を大きくしたといえる。
これらの結果から規制緩和は消費者の利益を拡大したが路線別に格差があり不十分だということができる。 政策への提言として、価格競争がどの路線でも起きるように、新規参入企業への経済的補助や羽田空港の発着枠の優遇、既存企業同士の競争の促進を挙げている。
報告書.doc

吉田泰輔(経済政策コース2年)・室屋孟門(経済政策コース1年)
報告書タイトル: 家計ガス消費の所得効果及び価格効果の推計
要旨
本稿では、ガス料金制度の累進化を念頭に置き、ガス消費の価格効果及び所得効果を推計した。 近年、ガス価格の急激な上昇に伴い、低所得者層を中心に家計のガス支出負担は増加傾向にある。 戒能(2009)によると、電力料金は累進的な体系となっており、低所得者層への配慮と過剰消費抑制による省エネに一定の効果を上げている。 これらを考え合わせると、ガス料金制度の体系を再検討することは、十分に意義あることと考えられる。
分析に当たっては、1980年から2009年まで30年間の家計消費データ及び物価データを用い、 所得階層及び年齢階層別に定常化解析法(Box-Jenkins法)によってガス消費の価格効果及び所得効果を推計した。 結果、所得中下位層に代表される低所得者層において有意な価格効果が観察され、中位層以上の所得階層では観察されなかった。 また、所得が比較的少なく世帯人数が小さいと考えられる20、30代において有意な価格効果が観察された一方、 所得が比較的多く世帯人数が大きいと考えられる40、50代においては観察されなかった。 更に、都市ガスとプロパンガスで価格効果及び所得効果を検討したところ、都市ガスにおいては上記と同様の傾向が観察された。
ガス料金体系の累進化が採用された場合、低所得者層及び20、30代の年齢層のガス消費量は増加すると考えられ、 低所得者層及び若年層を対象とした社会政策として一定の効果があると考えられる。ただし、 それらの階層におけるガス消費量は小さいため、その影響は限定的であるとも言える。 一方、比較的ガス消費量の大きい中位層以上の所得階層及び40、50代の消費量には変化が無いと考えられ、 消費抑制に伴う省エネ効果は期待出来ないと考えられる。 全体としては、ガス消費量は増加し、省エネに対してはマイナスの効果が生じると考えられる。 現実の政策決定においては、低所得者層及び20、30代への社会政策上の効果と、 省エネに対するマイナスの効果が総合的に考慮されることが望まれる。
報告書.doc

講義資料

第1講スライド.ppt  (4月7日使用) 
第2講スライド.ppt  (4月14日使用)
第3講スライド.ppt  (4月21日使用)
第4講スライド.ppt (4月28日使用) 
第5講スライド.ppt (5月12日使用)
第6講スライド.ppt (5月19日使用)
第9講スライド.ppt (6月 8日使用)
第9講スライド(修正版).ppt
第10講スライド.ppt (6月15日使用)
第10講スライド.ppt(シート追加版) (6月15日使用) br>第11講スライド.ppt (6月22日使用予定)

過去の事例研究


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