今川拓郎・松村敏弘
1年生班は、ミクロ、マクロ、計量を学ぶ前に、具体的な事例に取り組み、 今後学ぶこれらの分析道具を使いこなすためのイメージを作ることが目的です。 最終的に提出するレポートは、既に学んだ道具を使いこなした成果ではなく、 これから学ぶ際の出発点という性格を持っています。 したがって、レポートの完成度は必ずしも高くなくとも、使った道具が若干不適切であったとしても、 後になって「こうすればより良いものになった。そのことがミクロ・マクロ・計量を学んで認識できた。」 と実感できれば、コース全体として成功であるといえます。 公開したレポートを読まれる方はそのような性格のレポートであることをご承知おき下さい。 2年生班は1年間かけて調査を行うレポートの中間報告です。 最終的な報告書は冬学期末までにまとめることになっています。
2年生班:遠山祐太・西村仁憲
報告書タイトル: 放送局と放送番組制作会社の垂直的関係に関する問題分析
要旨
現在、放送局は放送する番組の番組制作のほとんどを外部の番組制作会社に委託している。
しかしながら、放送局と番組制作会社の取引において、しばしば番組制作会社が経済的に不利な状況に置かれていることが指摘されている。
具体的な事例としては、放送局による放送番組の買い叩き、交渉なしで番組の著作権が放送局に帰属する、などが挙げられる。
本報告書においては、このような状況が発生している原因を、放送市場の構造及び放送政策の観点から検証していく。
放送番組制作市場の現状として、極端な需要寡占の状態に陥っている点が本報告書の調査により明らかとなった。
放送産業において規模の半分を占めているのは地上波放送局である。
また、地上波放送局は系列化が進んでおり、地方局において放映される番組の約9割が系列キー局から供給されているため、
実質的に番組制作の需要者として数えられる放送局は限られている。
特に、東京ではキー局5社に対して番組制作会社が約500社存在する競争構造になっており、放送局が取引上圧倒的に優位な立場にあることが示唆された。
次に、このような市場構造が生まれた原因として、放送政策の検討を行った。
その結果、「放送普及基本計画及び放送電波使用基本計画」や「ハード・ソフト一致原則」などによって、
放送局の参入数が抑制されていることが一因であることが示唆された。
最後に解決策案として、@放送局系列化を解消させるためのマスメディア集中排除原則の徹底、
ABS・CS放送における新規事業者の参入促進、
B通信と放送の融合の促進による放送コンテンツのチャンネル増加、
C地上波放送局の番組編成部門と放送部門の解体を挙げた。今後の課題としては、以上の解決策案の精緻な検討及び評価が挙げられる。
報告書.doc
1年生班:矢ヶ崎将之
報告書タイトル: 番組制作会社の経営環境改善へ向けての理論分析
要旨
近年、放送コンテンツ制作における番組製作会社の役割は多チャンネル化やコンテンツの流通促進の要請等からその重要性が増している。
そのため、番組製作会社のインセンティブ向上の観点から制作環境の整備や制作取引の適正化を図ることが大きな課題となっている。
番組制作会社のコンテンツ制作へのインセンティブの低下は、
番組の質の低下を通して国民生活に影響を与える。本稿の目的は、
そのような番組制作会社のインセンティブ向上という課題のもとに、
番組制作会社の経営環境改善へ向けて不完備契約理論という理論的道具を用い、
現状の理解および原因の解明と、それに基づく政策的含意を導き出すことを目的としている。
結論としては、番組制作会社の二次利用に関する独占的権利を契約を通して保証し、
それを前提とした上で二次利用のオプションの増加、及びインターネット等のネットワーク環境の充実が重要であることを述べる。
報告書.pdf