提言 停電を避けるために我々ができること

 

 福島第一原発が地震と津波によって失われた。これに代わる発電所が早急に建設されることは見込めない。東京電力管内の夏の電力需要は6000kWに上るが、今夏の電力供給力は4500kWと見込まれ、4分の1足りない。つまり、我々がいままで通りに電気を使い続けるとすると、今年の夏は常に4分の1の地域で停電を実施しなければならなくなるということだ。

 しかもこの問題は今夏をしのげばあとは大丈夫というわけにはいかない。福島第一原発に代わる原子力発電所を建設することはまず無理であろう。もはや原発を引き受けようとする地方は出てこない。原発の代わりに火力発電所を作ればよいという人がいるかもしれない。しかし、そうすると日本が京都議定書で約束した二酸化炭素排出削減の公約は絶対に守れない。原子力発電所は二酸化炭素の排出がきわめて少ないエネルギー源だが、その代わりに火力発電所を作ると日本の二酸化炭素排出量は増えてしまう。日本の地名を冠した京都議定書を日本が踏みにじるわけにはいかない。

 従って、今後恒久的に夏場は電力が4分の1不足する状況が続くことを覚悟しなければならない。原発は、もし何も事故がなければ二酸化炭素は排出しないし、1kWhあたり6円程度ときわめて低コストで電気が作れるしで、けっこうずくめの電源であった。しかし、今回のような事態になると、膨大なコスト、さらには人的犠牲まで払うことになることを我々は痛いほどわかった。もはや原発を前提としない社会を作っていくしかないのである。

 まず電気料金の上昇は覚悟する必要がある。火力発電所の発電コストは1kWあたり10円前後で、原油の値段次第ではもっと上昇する。民主党の岡田幹事長は電力需要抑制のために需要のピーク時の電気料金を引き上げる可能性を述べたそうだが、原発が失われた以上、むしろ恒久的に電気料金を値上げして当然なのである。

 一方、市民の側でも原発を前提としない社会を作るためにできることはいっぱいある。まず家庭の中の電気製品を節電型のものに買い換えることである。いまでは電球型蛍光灯やLED灯の種類が豊富になり、家庭内の白熱灯はすべて蛍光灯やLEDに入れ替えることが可能である。白熱灯に比べて、電球型蛍光灯やLEDは値段が高いが、節電効果や長持することを考えると長期的には経済的である。

 一軒家に住んでいる家庭にはぜひ太陽光発電の導入を検討いただきたい。私の自宅では下の写真のように屋根の上で太陽光発電を行っている。晴れの日であれば、自宅で使う電気は十分にまかなえる。夏の炎天下で停電になっても、太陽光発電があればエアコンや冷蔵庫を普段通り使うことができる。また、自宅で使わなかった余剰電力を東京電力に提供できるようになっているので、これからの電力不足の緩和になにがしかの貢献ができる。さらに、太陽光発電は二酸化炭素を全く排出しないので、地球環境問題に対する貢献もできる。

 経済的にも、2009年秋から余剰電力の買上価格が2倍に引き上げられたので、我が家の場合、過去1年間に東京電力に支払った電気代が109000円ほどだったのに対して、東京電力から受け取った電気代が165000円ほどと、かなりの黒字になった。かなりの額の初期投資が必要なことはたしかだが、電力不足の緩和と二酸化炭素削減に貢献でき、経済的メリットもあり、夏場の停電にも対処できる太陽光発電の輪に志と屋根のある人はぜひ参加して欲しい。



丸川知雄

2011329


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