提言 臨時の電力消費税を導入して、電力需要を抑制し、震災被災地域の救援・復興の財源に充てよう

 

 2011311日に発生した東北関東大地震によって東京電力福島第1原子力発電所が壊滅し、今日もなお自衛隊や消防による懸命の冷却作業が続いている。首都圏の電力需要の大きな部分を支えていた福島第1原発が停止したことによって、首都圏の電力供給が不足し、東京電力は地域を分けて停電を実施する「計画停電」を行っている。

 317日には、海江田経済産業大臣が国民に節電を呼びかけ、その日の夕方にも停電により鉄道が停止する可能性があるというので帰宅ラッシュが起こったが、その帰路で目に付いたのは、節電の呼びかけなど馬耳東風で、まったく普段通りに装飾的な照明をつけたままの商店が少なくないことであった。

 我々が久しく経験してこなかった停電が間近に迫ってみると、我々の生活がいかに電気に依存していたかを改めて思い知らされる。拙宅では押入に仕舞ってあったガスストーブを取り出してみると、それさえ電気なしでは点火できないことが判明した。計画停電によって病院や交通信号機など公共性の高い施設も停電することとなり、信号機が消えていたことによる交通事故も起きていると聞く。

 福島第1原発が復旧する可能性はゼロであるだろうし、それに代わる電力源が早急に開発できるとは考えにくい。今後少なくとも1年ぐらいは電力供給が不足した状況が続くのではないだろうか。その間、計画停電が行われ続けるとすれば、生産活動や市民生活に大きな支障になり、被災地域の救援や復旧にも悪影響が及ぶ恐れがある。また「計画停電」では、拙宅のある地域のように停電の対象になっていない地域もあり、停電が頻繁に行われる地域との不公平感がある。

 計画停電を避けるには、電力需要を、現在の供給能力の範囲内にまで抑制する必要がある。そのためには国民のいっそうの自覚と行動が求められることはいうまでもないが、自覚に訴えるだけでは十分な節電を実現できないのではないかと思われる。「自覚」のない人々に対する抑制効果がないからだ。自己犠牲を払って節電した人々との不公平感はぬぐえない。

 需要抑制のためには電力料金を引き上げることがもっとも効果的であると考える。そうすれば節電に対する自覚のない人々でも経済的動機に基づいて節電するであろう。

 ただ、値上げした電力料金の収入が東京電力に入るのでは国民の納得は得られそうにない。そこで、現行の電力料金に1kWhあたり10円程度の電力消費税を上乗せしてはどうか。消費者にとっては40%以上の値上げになるので相当の電力需要抑制効果が期待できる。課税によって国に入った税収は震災被災地域の救援と復興に充てることにすれば、国民の理解と協力が得られるはずである。

 なお、東京電力の料金体系には「ナイト10」「ナイト8」「電化上手」など、原発の稼働を前提として夜間に電力の消費を促すものがある。しかし、福島第1原発がなくなった以上、夜間電力の消費を促すべきではない。電力消費税によって1日のどの時間帯でも消費者が同じ使用量を負担するように調整すべきである。

 医療機関や鉄道など、公共性の高い分野については電力消費税を減免する必要はあるが、減免の範囲をむやみに拡大することは避けるべきである。

丸川知雄

2011322

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